川井書生の見聞録

映画評論、旅行記、週刊「人生の記録」を中心に書いています。

人生2度目の就職・転職活動⑨ー新潮社編ー(2021年6月27日号)

 26歳になった神奈川県在住の男性の人生記録「2度目の就活編」。第9回は日本文学、海外文学作品をはじめ、週刊誌や新書など様々な書物を出版している新潮社の体験談。北海道新聞社の面接辞退を最後に新聞社の面接を諦めた僕。次は出版社を集中して受けることに決めた。※人生の記録は週刊になります。毎週日曜日の19:30に投稿します。

週刊新潮 2021年 5/20 号

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⑴ 新潮社の志望動機

 僕が初めて新潮社に触れたのは大学生と決して早くはなかった。大学受験で世界史を選択していたので、シェイクスピア、ディケンズ、カフカ、ヘミングウェイなどの文学作品が気になり、新潮文庫の『ロミオとジュリエット』を手に取ったのが最初である。それからディケンズの『大いなる遺産』、カフカの『変身』、ヘミングウェイの『老人と海』など、本棚に徐々に徐々に新潮文庫が増えていった。今では司馬遼太郎作品をはじめ100冊以上の新潮文庫を所持している。

 そんな新潮社の採用試験を受けようと思うのは自然だろう。新潮社はESの他に「志望動機」というテーマで短い作文を課していた。これは僕が現役の頃にもあったので毎年恒例だと思う。以下に僕の「志望動機」作文を掲載する。

 十七時の鐘が鳴ると、小学生の私は友達と解散し帰宅する。両親は共働きで夜遅くまでいない。ついさっきまで楽しかった分、一人でいるのは寂しかった。両親が帰ってくるまで、私は本の中の友人に会うことが多くなった。それ以来本が好きになった。特に新潮文庫を読んでいた。

 寂しい思いをしている全ての人、現実に不満を抱いている全ての人に向けて、本や雑誌を作りたい。

 今読み返してみると、僕と新潮文庫の出会いは小学生になっている。うーん・・・小さい頃に新潮文庫を読んだ記憶がないなと本棚を眺めていると、ジュール・ヴェルヌの『十五少年漂流記』が目に入った。確かにこれは小学生の時に読んだかもしれない。

 現役の際と同様に書類選考は通過した。

⑵ 新潮社の筆記試験

 応募時点で筆記試験は実施する予定だったが、緊急事態宣言が発出されたため、筆記試験ではなく記述試験となった。要は作文試験である。今回の試験はES提出時より長く、しっかりと作文を書くことが求められた。問題は「あなたが今年、最も「流行させたい言葉」は何ですか。その「言葉」とその「理由」を1000字以内で書きなさい」というものだった。下記に僕の作文を載せる。

 「ご当地小説」を流行らせたい。気軽に旅行できない世の中だからである。

 北九州にある風力発電所、北海道の大自然など、仕事でも趣味でも様々な場所へ行った。中でも、安倍政権時に行われた緊急事態宣言下に、小淵沢へ行った時の出来事が印象に残っている。その時は撮影の仕事だった。

 私達5名の撮影クルーは、小淵沢にある研究施設を撮影するために前泊入りした。「こんな時期にありがとうございます」と民宿の女将が言った。私達は2020年5月の4組目の宿泊客だった。緊急事態宣言下では無理もない。私達だってこの3ヶ月、撮影の仕事はなかった。

 女将は山菜とすき焼きを配膳しながら、お土産として椎茸をくれた。私達と女将は食事をしながら互いの話をした。彼女は夫と民宿を経営し、夏には南アルプスに登山しているそうだ。私は制作進行というプロジェクトを管理する仕事をしており、普段は毎月撮影の仕事があるが、今回は3ヶ月ぶりの撮影であることなどを話した。

 苦しい経営状態におかれた私達の会社に、手を差し伸べてくれたのは長い付き合いのある企業だった。女将さんの民宿に顔を出してくれるのも常連さんのようだった。

 時期が時期なので、民宿を貸し切りで泊まれた。部屋の窓から見える小淵沢の夜空は星が煌めいていた。カメラマンはすかさず写真を撮った。

 翌朝、私たちは椎茸のお礼にその写真を女将に贈った。緊急事態宣言下だからこそ、女将の暖かいおもてなしが私の記憶に残っている。

 菅政権下で行われた緊急事態宣言で、女将の民宿は再び打撃を受けているだろう。彼女達のように経営に苦しんでいる宿やホテルが、小淵沢の星の数ほどあるのは想像に難くない。

 では、彼女達が暮らす地方に人を呼び込むために、出版社は何ができるのだろうか?

 私の答えは「コンテンツ・ツーリズム」である。それはジブリ映画ファン、新海誠ファンなどが聖地巡礼する観光事業である。

 地方に旅行に行くと、「ご当地グルメ」「ご当地アニメ」はある。しかし、「ご当地小説」はあまり特集されていない。なので、私は「ご当地小説」という言葉を流行らせ、小説に熱中した読者達が物語の舞台へ足を運ぶように画策し、あの女将のように困っている人たちを助けたい。

 僕は何度も使い回している小淵沢のロケ秘話を使用し、新潮社の志望理由につなげた。記述試験は無事通過。

⑶ 落とそうとする面接か、通過させようとする面接か

  新潮社の面接は本社から別会場に場所が変わった。当日はブースごとに面接官が2人ずつおり、学生は1人の個人面接だった。僕の面接官は男性と女性1人ずつだった。

 自己紹介や志望動機といった基本的な質問から、好きな本や最近気になったニュースなどを訊かれた。そこで男性面接官から「作家になりたいんじゃないですか?」と詰問調で何度も尋ねられ、こちらを測るような眼差しで観察していた。

 就活の面接には2種類あると感じた。1つは応募者を通過・採用させてあげようとする面接である。KADOKAWAや文藝春秋の面接がそうだった。面接内容は堅いものから雑談まで種々様々だが、その口調は穏やかであったり楽しそうである。

 もう一方は応募者を落とそうとする面接である。大部分の新聞社がそうだった。面接内容は堅いものが多く、質問ではなく問題のような内容を応募者に訊く。そして、応募者の意見を尊重するのではなく、面接官自身の意に沿う回答をしたものだけが通過する。応募者としては楽しくない面接である。

 新潮社の面接は後者だった。男性面接官はこちらを見定めるような態度であったし、女性面接官も中々きつい態度だった。なぜなら面接の最後でお祈りされたからだ。僕は2度の就活経験で面接中にお祈り発言をされたのは初めてだった。言い方も突き放す感じで、僕も流石に腹が立った。

 面接の時点で応募者に強気な態度を取る人というのは、基本的に部下の人使いが荒いし、部下の意見にあまり耳を傾けないし、部下が意見を言うと不機嫌になるような人の場合が多い。というのを以前の会社で僕は学んだ。だから、面接で厳しい態度を取る面接官がいる時点で、新入社員は苦労をすることになるだろう。

 

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ESや面接において参考にした書籍

 本来は面接の前に筆記試験があったので、時事問題や漢字の勉強をしていた。この本には漢字の読み書き以外に四字熟語や古事成語などの語彙問題もあるので、これ1冊やれば大丈夫だろう。